あいだあいてしまったが再び寿里子
夜も家の中で生活できるようになり
つまりは我々と家族になった寿里子。
あくまでも慎ましく身の程をわきまえた猫だった。
私は過去の経験から私たち人間が食事中
テーブルの上を見せることは絶対しなかった。
たとえば隣の椅子が空いているから座らせるとか
食事中の食べ物を分けて与えるとかしなかった。
魚があるらしいと台所へきて
足元でせがむこともなかった。
決められたところにある器から
きちんと煮干しやマグロ、アジを食べていた。
彼女は時間にかなり忠実で
一時期は「時計猫」と私は呼んでいた。
たとえば明日はいつもより早く起きなければいけない
というときに「寿里子、明日は4時半」
と言っておくとその頃に声を発してくれたのだ。
また生徒のレッスンが長引くとそれも注意しに来る。
おとなしく部屋のどこかに座っているのだが
40分以上経過したあたりから動き出す。
それも私に対してでなく生徒さんに対して
アクションを仕掛けるのである。
だいたいは小さな声で「ニャ~」という。
あるときは前足を生徒さんの膝にポン
膝のうえに乗ろうとしたのだろうか。
でも彼女は自分から人の膝の上に乗る猫ではない
これも「もう終わりですよ」というサインか。
その生徒さんは寿里子がそばに来ていたことに
まったく気が付かないほど弾くのに集中してたらしく
膝を叩かれて飛び上がるほど驚いていた。
猫にしてみればたぶんだけれど
自分が寝ているならどうでもいいけれど
こうして覚醒していてそこに人がいるのに
なんの変化も起きないことがいやだったのか
自分が無視されていると感じたのか
そんな風に私は思っている。
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