2025/09/07

「丼」という漢字

 昨年の初夏まで家の処分などに関わった親戚の叔父は
現在高級老人ホームで余生を過ごしているが
その叔父は現役時代、長年中国でビジネスをしていた。
20年前に雑学本『漢語ロード散策』なる本を執筆。
中国文化を取り混ぜて、漢字の由来とかを
叔父が独自の切り口で書いた非常に面白い本である。
烏龍茶はどうしてこういう字を書くの?
烏のように黒く、龍の爪のように丸まっているとか。
「丼」という漢字の項目も印象に残っている。

日本も最近は印鑑を使う回数も減ってきたが
叔父曰く、中国では使うことがなかったらしい。
それにもかかわらず街中には多くの印鑑屋があり
ほんの数時間で印鑑を作成する。
私も叔父を尋ねて北京に行ったとき多くの職人を見た。
叔父も「三七子ちゃんも作るか?」と何度も誘われた。
さて、叔父の姓は平井というのだが、
中国人からプレゼントされる印の多くは「平丼」だ。
著書曰く、「井」は井戸の枠を表しているが
「丼」は湧いた豊かな水を貯えていることを意味するらしい。
カラ井戸ではよろしくないということで「丼」と
先方は叔父を思って「平丼」の印鑑をプレゼントしてくれたというわけ。
当然、引き出しの肥やしだと書いている。
(おや、そういえば片づけた時には見なかったなぁ、その印鑑)

8/23日経の阿辻哲次氏のエッセイ「漢字そぞろ歩き」に
この「丼」のことが書かれていた。
こちらを読んで更におもしろいと思ったのでご紹介。
江戸時代に飯や蕎麦などを大きな器に一膳盛りする店が登場。
安いのが取り柄で愛想もなく突っ慳貪(つっけんどん)から
「慳貪屋」といわれるようになり、そこで使われる器が
「慳貪振り鉢」と呼ばれて「どんぶりばち」になったとか。
ここからがなんとも日本らしいというか。
井戸につるべを投げ入れると「ドンブリ」という音がする。
井桁の中のチョンとある点がつるべね。
つまり丼は擬音語を訓読みにあて名詞にしちゃったわけ。
この擬音語が豊かな日本ならではと感じたわけです。

ちなみに阿辻氏も叔父も「丼」という丼料理は中国にないという。
「天津丼」 ないですぜ。

0 件のコメント:

コメントを投稿