2023/03/20

池波が憂いたこと

池波正太郎の『食卓のつぶやき』というエッセイに
池波氏の曾祖母が殿さまの奥女中をしていて
そのお仕事が「お袴たたみ」というものだったと書いてあった。
ほうっ、袴をたたむ専門職かぁ。
もちろん他にもお仕事はあったであろうけれど

つい先日親族と話をしていて、
私の父の叔母は戦前、昭和のはじめ
三井に奉公していて
車から降りてきたご主人から
「ゴルフバッグをおろすよう」
言われたというエピソードを聞いた。
昭和のはじめ、ゴルフバッグ。
なんだ? これは。
だったという。

三井と言えば鎌倉の夫の実家の前が
三井の番頭さんのお宅だったのだけれど
私は何度も夫からこちらのお宅には
雨戸の開け閉め専門の人がいたと聞かされている。
番頭さんよ、番頭さん。
きっと番頭さんなんてたくさんいたのでしょうね。
その中でもえっらくお金持ちなのね。
ほうっ、と感じつつ池波エッセイを読む。

このエッセイは晩年の池波が書いたものだが
他にこのようなことも書いている。
「いまの日本の食糧のゆたかさ、料理店の豊富さ
 そして、料理店案内の本が飛ぶように売れている
 という世の中になったが、これは、近い将来に、
 人間たちがおもうように食べられなくなる前兆のような気がする」

幸い食糧難など経験のないままこの年まで生きてきた。
むしろ世界中のおいしいものを選んで食べられる豊かさ。
これが普通になってしまった生活。
考え直さなくてはいけない時代に入っていると思います。 

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